シーホースとナッツ

長女「きなこ」と次女「あんこ」の子育て中に考えたこと、の保管場所。

夫が「産後」を知るために

昨日のNHK『あさイチ』は、
「産後クライシス」というテーマでした。
妻が事前に気づいて予約してくれていたので、
帰ってから全部見ることができました。

内容は「産後、夫の無理解から夫婦仲が悪化する」
というようなもので、
たくさんのお母さん方の「そうそう!」という、
日頃の鬱憤を吐き出す声が聞こえてきそうな感じが
すごくする番組の作り方になっていました。
放送時間的にも、主にお母さんをターゲットにして
いるものだから当然なのでしょうが、
夫側の立場で見るとなんだか危機感ばかりを
煽られているような気分になってしまいました。
それに関してはとりあえず今からでも
身を引き締めることとして、ここでは敢えて
夫目線で、思うところを書きたいと思っています。

別に番組に出てきたダメ夫を擁護するつもりは
毛頭ないですし、当然そうじゃないお父さんや
仲良くできている夫婦だって沢山いるでしょうから、
どっちが悪いみたいなことを言う気は全くないです。
個人的に言いたいのは、男の立場で出産・産後に
関わろうとした時に感じる、社会への不満です。
少し長いですが、お付き合い下さい。

産後、夫婦仲が悪くなる理由として、
夫が育児に協力的でない→妻の不満が溜まる
というのが大きいのは多分間違いないと思いますが、
ではなぜ夫は育児に協力できないのでしょうか。

お父さん達だって、何も好き好んで
奥さんに嫌われようと思っているわけでは
ないでしょうから、要は単純に「わかってない」
ことが主な原因なんじゃないかと思うのです。
・赤ちゃんの世話がどれほど大変か、わかってない。
・産後すぐの母親がどれだけ体にダメージを
 受けているかが、わかってない。
・それを一人でやっている奥さんがどんなに
 ストレスを抱えているか、わかってない。
ということで、結果として奥さんの愛情も冷めると。

じゃあ解決のためにどうすればいいかというと、
とにかく夫が理解をするしかない。
でもこれは、僕自身が強く感じたことなのですが、
男性が出産・育児に関して知識を深めるというのが
実は意外に困難なことなのです。
まず学校でそういう事を教わった記憶は皆無だし、
妊娠後、母親学級は何回も開かれているのに
父親が参加できるのはやっと両親学級が一回だけ。
『赤ちゃん』で情報を探すと、必ずと言っていいほど
それは”お母さん”に向けたものになっているので、
探せば探すほど悲しい気持ちになっていくし、
妊婦検診に2人で行っても、まるで父親なんて
そこに存在していないかのような扱いを受ける始末。
そんなことが続くと、まるで社会全体から
「お前は知らなくてよし!」と言われているような、
そんな気分にだんだんさせられていくのです。
そういう状況にも負けず男性ががんばる為には、
相当なモチベーションと折れない気持ちが
必要になると思います。かなり積極的にやっても
こうなのであれば、それほどでもない男の人たちが
そういうことを学ぶ機会というのはほとんどないか、
全くゼロかもしれません。

そしてもう一つ、何とかならないかなぁと思うのが、
そういうことを”家庭の問題”というように
とらえてしまう風潮です。
番組内でもどなたかが言っていた通り、確かに昔は
もう少し「子育て」が身近に存在していたのかも
しれませんが、現代はきっとほとんどが初心者です。
実家や両親の援助も受けられず、本当に2人だけで
子どもを育てているケースも増えているでしょうし、
子育ては誰にとっても間違いなく相当困難なこと、
になっているんじゃないかと思います。
そういう形になってしまった今の日本で
みんなが子育ての大変さを乗り切っていくためには
社会全体の支援が必要だと、個人的には
常々考えているのですが、それに反して
相変わらず世間では「家庭内のことは家庭で解決」
という風潮のようなものをすごく強く感じるのです。

今回のケースでも、「妻が夫を教育すべし」みたいな
言い方が出てきていましたが、お産のダメージと
赤ちゃんのお世話で極限状態のお母さんに
そんな余裕がどこにあるのよ!という思いと、
結局そうやって家庭内の問題だから、で
済まされてしまうのか…?という思いの
両方がありました。

各家庭の、個人個人の自主性に任せていたら
当然それぞれの意識の差から
うまくいくケースとそうでないケースが
出てきてしまうでしょう。
経済活動ならそれでもいいかもしれませんが、
子育てに自由な競争原理など持ち込まれては
たまりません。どんな子どももある程度
平等に育つ権利が保障されるよう、ちゃんとした
社会からの支援があってほしいものです。
クライシスになりそうな理解のない夫だったとして、
妻はそれでも苦痛を感じずに子育てができるような
外からのサポートがあったとしたら、
家庭は崩壊しなくても済むかもしれない。
夫の側にも正しい知識と情報、妻を労る想像力を
養えるような適切なサポートができたら、
両親が上手く協力して育児ができるかもしれない。
そういう、社会全体からの手厚い支援が
なされるようになることを願ってやまないのです。

たまたまつい先日、産前産後の家事・育児サポートを
手がけるままのわさんが作られている
「男の産後手帳」なるものが届きました。
希望者に無料で配布してくださっているもので、
男性でも読みやすく、手に取りやすいボリュームで
産前産後のお母さんがどんな状態で、
どういうことをサポートしてあげられるのかについて
とてもわかりやすく解説してくれています。まさに
「こんなの待ってた!」というステキなものでした。
そしてできればこういう取り組みが、もう少し普通に
どこにでもあるものになってくれたら…
ということなんですよね。
ていうか、これを義務教育に組み込んで
全ての男子にガツンと叩き込んだらいいんですよ。
そうしたらきっと、悲しい思いをするお母さんも、
大好きなお母さんのしかめっ面ばかりを見て育つ
赤ちゃんも、きっと減らせると思うんですよ。

最後にもう一つだけ。

男性は、どんなに強く願ったところで
おなかに子どもを宿すこともできなければ
おっぱいをあげることだってできません。
夜赤ちゃんが泣いたらすぐ気づけるような
優れた感覚も持ち合わせていなければ、
赤ちゃんが喜ぶ柔らかい腕も、高くて優しい声も、
持ち合わせてはいないのです。
それだけのハンデを抱えながら、それでも一生懸命
子育てに取り組むお父さんたちはたくさんいます。
どうかお母さん、男性全てに絶望することだけは、
しないであげていただけたら幸いです。