シーホースとナッツ

長女「きなこ」と次女「あんこ」の子育て中に考えたこと、の保管場所。

3歳児の頭の中。その2

(前回の記事→ 3歳児の頭の中。その1

この前の連休最終日、長女きなこの謎な行動の
意外な理由を知った私たち。それを受けて
今の状況で出来ること・出来ないことを
改めて確認し合い、明日からまた頑張ろうと
決意を新たにした、次の日の朝のことでした。

前の晩にしっかり話を聞いてあげたからか、
きなこはいつも手こずる布団からも威勢よく
起きてきて、ねこあつめのおかげもあって
朝食も遅れることなく食べ終わり、
幼稚園へ行く準備はいつになくスムーズに
進んでいたはずでした。

そのねこあつめで、手持ちの金額が足りず
「買えるものが何もない」という事態から、
雲行きは急激に悪化を始めます。
別にそのこと自体は珍しいことではなく
連休中にも何度か同じ状況は発生していて、
でもこれまでは多少うだうだ言いながらも
ちゃんとゲームを終わらせられていました。
それがこの日はちっとも気持ちが収まらない。
何を言っても「何か買いたいの!」と大荒れ。
鬼の形相でパンチキックが飛んできます。
こちらも休み明けで、会社は朝の会議もあり
遅刻ができません。タイムリミットがある中で
ついイライラを抑えきれず、悪い方に本人を
刺激するような態度をとってしまいました。
前の晩に「子どもの声に耳を傾けよう」と
思った、舌の根も乾かぬうちに。

結果、怒って寝室に走ったきなこを追うと、
次に飛び出したのは「幼稚園行きたくない」!
この辺でやばい雰囲気を感じ、冷静になって
買えなかったことへの遺憾の意と、
配慮に欠ける言動をしたことへの
謝罪の姿勢を示すも、やはり鎮まる気配なし。
事態を心配した妻が顔を出したものの
「ママは帰って!」。
ためしに強硬手段で先に着替えを始めて
一人で出発するような素振りを見せると、
まさに逆効果。大泣きされてしまいます。
前に上手くいった「どんなことがイヤなの?」
と聞きいてみる戦法も、全く効果なし。
ひたすら「幼稚園ヤダ」の一点張りです。
なおこの辺りで、つられて泣き出すあんこ。

既に朝の会議への遅刻は確定していましたが、
とにかく何とか事態を収めないといけないので
泣き喚くきなこを抱っこしてリビングに戻り、
とにかく落ち着いてもらえるまで待ちました。
妻が気を遣って「もう私が送っていくから」
「休ませるしかないかねぇ」と声をかけて
くれましたが、それが本当に最終手段で、
可能な限り回避すべきことであるのは
何より妻自身の顔色が物語っていました。
しかしそこで、もはや僕らの対応では
どうにもできないような驚きの発言が、
きなこの口から飛び出したのです。

ようやく少し落ち着いてきた所を見計らって
改めて会話を試みてみたところ、
「どうしても幼稚園休みたいの?」
「…うん」
「何か恐いことでもあるの?」
「…うん」
「どんなことが恐いの?」
「…だって、Aちゃんが意地悪してくるから」
「!!?」
Aちゃんとは、以前きなこが「一番の仲良し」
だと言っていた、クラスの女の子です。
そういえば秋頃には登園中に一度だけ、
「今はAちゃんはBちゃんが好きなの」と
最近はあまり遊んでいないことを匂わす発言を
していたことがありましたが、まさかそんな?

よくよく聞いてみると、Aちゃんからは
「パンチされた」り
「座ってたら後ろから蹴られた」り
していたそうで、そういうことさえなければ
幼稚園には行ける、とのことでした。
そこまで聞いてもはや「行きなさい」なんて
とても言えるわけもなく、とにかく本人には
話してくれてありがとうということを伝え、
今日は休んで担任の先生にも電話で伝えて
サポートをお願いしようということになり、
きなこもそのことに同意してくれたので
(というより是非電話をしてほしいと)
結局この日は妻に、何の準備もないままでの
2人のお世話と電話連絡の負担を強いつつ、
僕は20分遅れで会社に向かったのでした。

その後の先生への電話、さらに翌日のお迎えで
妻が直接会話して聞いたところによると、
「確かにきなことAちゃんは、一時期一番の
仲良しだった」
「Aちゃんに限らず、まだ気持ちを上手に
伝えられない子も多く、Aちゃんも別に
意地悪をしているつもりはなかったようだ」
「BちゃんとAちゃんは幼稚園に入る前からの
友達で、今はきなこも他の子と遊ぶようになり
Aちゃんは前のようにBちゃんと遊んでいる」
ということがわかりました。

結局まだまだ3歳児、上手に言葉で表現できず
おかしなやりとりや衝突が生まれることも
現場では度々起きていることのようです。
その都度先生が仲裁したりサポートしたりして
ちょっとずつ人間関係ができていっている、
という話は確かに以前父母会でも聞きました。

きなこも、普段の会話はかなりスムーズに
できるようになってきているものの、それも
あくまで本人の持つボキャブラリーの中での
やりとりに過ぎません。
特に「気持ち」のような実体のないものは
言葉で置き換えるのが難しいだろうし、
自分の中の感情を言い表す言葉を知らなければ
表現することはできないわけです。
そこを大人が、代わりに翻訳するつもりで
言葉にしてあげる作業が必要だというのは、
それこそイヤイヤ期の頃から感じていた
ことでした。
まだまだ表現力が未熟な分、こちらが根気よく
子どもの考えていることや感じていることを
理解する努力をしなければいけないのだと、
前の出来事に続いてつくづく思い知らされたの
でした。

さて先ほど「お迎え」と書いた通り、きなこも
翌日には無事に登園することができました。
先生がさっそく直接話を聞いてくれたそうで、
ただそれに関して本人は
「ちょっとだけね。」と言っていたし、夜には
「幼稚園で誰が助けてくれるの?」
「先生だよ~」
という会話もしているので、果たしてどれだけ
本人の中でのわだかまりが解消されているかは
わかりませんが、とにかくこちらとしては
「何か嫌なことがあったら聞くからね。」と
伝え続けて見守るしかないのかなと思います。

友達関係のトラブルなんて、まあいずれは
起こるにしてもまさか3歳で早くも…とは
我々も若干浮き足立った所がありましたが、
こういうことを経験してこちらもスキルを
身に付けていくことになるのでしょう。
先ほど「表現力が未熟」と書きましたが、
実際今回のことに関しても相手の子の言い分も
訊いたわけじゃないし、きなこがどこまで
正確に起こったことを説明できているかも
定かではありません。
でも少なくとも、そこは子どもの言うことを
信じるという前提で接することが
大切なのだろうと思います。そうでなければ、
子どもの信頼を得ることなどできません。
またそれに関して妻が、
本人が「イヤだと感じた」、そのこと自体は
紛れもなく事実だ、と言っていました。
本当にその通りだと思います。

いくら表現力が未熟だからといっても、
感じることや気持ちの部分は
大人と何ら変わるものではありません。
ただそれを置き換える言葉を知らないだけで、
子どもは子どもでいろんなことを感じたり、
いろんな感情を持って生きているはずです。
そのことを忘れずに、これからも子ども達と
きちんと向き合っていこうと思った、
今回の濃い数日間の出来事でした。